【8月号】所長丹のコラム配信
実家以外にも不動産を持っているかも?|所有不動産記録証明制度と2026年の相続・後見最新情報
まえがき:所長丹の戯言
みなさまこんにちは。司法書士・行政書士・土地家屋調査士の丹です。
相続のご相談で、「不動産は実家だけです」と伺うことがあります。
ところが、実際に調べてみると、実家の前の私道持分や、昔住んでいた地域の小さな土地、祖父母から引き継いだ山林などが、後から見つかることがあります。
不動産は預金通帳のように一冊にまとまっていませんし、自ら「私も相続財産です」と名乗り出てくれるわけでもありません。
これまでは、固定資産税の資料、権利証、名寄帳、登記情報、周辺の土地との関係などから、一つずつ手掛かりを拾って確認する必要がありました。そのため、私どもが資料を尽くして調査しても、100%すべてを洗い出すことが難しい場合があります。
特に多いのが、私道持分の相続登記漏れです。
見た目は普通の道路で、地域のみなさんが公道と同じように使っている。それなのに、登記を確認すると複数人の共有になっており、その一部が何代も前に亡くなった方の名義のまま、ということがあります。
私は、公道のように一般の通行に使われている私道については、法改正や公的な整備を進め、原則として公道へ移行させるべきだと思っています。
道路まで、何代にもわたって相続の宿題にしなくてもよいでしょう。笑
もちろん、私道にはそれぞれ成立した事情がありますので、簡単に整理できる問題ではありません。しかし、現在の仕組みが相続登記漏れや複雑な共有関係を生み続けていることも事実です。
そんな中、2026年2月から「所有不動産記録証明制度」が始まりました。
この制度は、これまで見つけにくかった不動産を確認するうえで、救世主となる可能性があります。ただし、結局のところ、この制度を使っても必ずすべての不動産が判明する、というわけではありませんので、注意点も併せてお知らせします。
今月は、この新しい制度を中心に、成年後見制度の改正や、「現況測量」と「境界確定測量」の違いについてもご紹介します。意外にもここにも私道問題が出てきます。
思わぬお宝が見つかるかもしれませんし、思わぬ宿題が見つかるかもしれません。 いずれにしても、知らないままより、早めに分かっていた方がよいのです。
実家以外の不動産を確認しやすくなりました
2026年2月2日から、所有不動産記録証明制度が始まりました。
これは、不動産の所有者本人や、その相続人などが法務局に請求することにより、特定の方が登記名義人として記録されている不動産を一覧化した証明書を取得できる制度です(不動産登記法119条の2)。
これまで不動産の登記記録は、土地・建物ごとに作成されており、特定の人が全国のどこに不動産を持っているかを一覧で調べる仕組みはありませんでした。
新制度によって、亡くなった方の相続登記が必要な不動産を、以前より把握しやすくなりました。
相続が発生した後だけでなく、所有者本人も請求できるため、親御さんが元気なうちに財産を整理する場面でも利用できます。請求は近くの法務局ででき、オンライン請求も可能です。窓口請求の場合は、1通1,600円の手数料がかかります。

証明書にすべての不動産が出るとは限りません
便利な制度ですが、証明書を取得すれば、必ずすべての不動産が見つかるわけではありません。
証明書は、請求書に記載した氏名・住所と、登記簿に記録されている氏名・住所を照合して作成されます。
そのため、次のような不動産は抽出されない場合があります。
- 登記簿の住所が昔の住所のまま
- 結婚や改姓前の氏名で登記されている
- 氏名の文字が異なっている
- 建物自体が未登記
- 所有権の登記がされていない
過去の住所が複数ある場合には、それぞれを検索条件として請求する必要が生じることもあります。
所有不動産記録証明書だけで判断せず、固定資産税の納税通知書、権利証・登記識別情報、市区町村の名寄帳、ご家族が保管している契約書なども併せて確認することが大切です。
小さな土地は登録免許税が免税になることも
新たに見つかった土地の価額が100万円以下の場合、相続登記の登録免許税が免税となることがあります。
また、相続により土地を取得した方が、その相続登記をしないまま死亡して数次相続となっている場合も、中間の相続登記に関する登録免許税が免税となる場合があります。
これらの免税措置の期限は、2027年3月31日です(租税特別措置法84条の2の2)。
なお、免税の対象や適用条件は登記内容によって異なり、申請書には免税の根拠条項を記載する必要があります。
成年後見制度も大きく変わります
認知症などにより、ご自身だけで財産管理や契約を行うことが難しくなった方を支援する成年後見制度についても、大きな改正が予定されています。
改正法は2026年6月17日に成立し、6月24日に公布されました。
今回の改正では、現在の「後見」「保佐」の制度を廃止し、「補助」の制度に一元化します。本人に必要な範囲で、補助人に同意権・取消権・代理権などを付与する仕組みへ見直されます。
また、その権限が必要でなくなった場合には、家庭裁判所が権限の全部または一部を取り消すことができ、補助人には本人の意向を把握し、尊重することも求められます。
もっとも、成年後見関係の改正はまだ施行されていません。施行日は、公布から2年6か月以内に政令で定められます。
現在制度を利用している方の手続が、直ちに変更されるわけではありません。今後、施行日や経過措置、家庭裁判所での具体的な運用が明らかになった段階で、改めてご案内します。

測量のリアル|現況測量と境界確定測量
「土地を測ってほしい」とのご要望をいただく際、実は測量にもその目的に応じていくつかの種類があることをご存じでしょうか。
まず「現況測量」とは、現地にある建物やブロック塀、道路との高低差、あるいは既存の境界標などを計測し、今の土地の状態をそのまま図面化するものです。
この方法は、基本的にお隣さんとの境界立会いまでは行いません。そのため、現況測量の図面があるからといって、隣接地所有者との境界確認が済んだことにはなりません。
一方、「境界確定測量」はより踏み込んだ作業になります。法務局や役所で資料を徹底的に調べ上げ、その資料と現地の測量結果を照らし合わせます。その上で、隣接地のオーナー様や道路管理者の方々に現地へお越しいただき、境界の位置を直接確認していただくのです。
売却や分筆を目的とする場合には、この立会いで合意した境界について、隣接所有者の方々と「境界確認書」を取り交わすのが一般的です。
もちろん、単に当事者の話し合いで好きな場所に線を引くわけではありません。法務局の公図や過去の測量図、境界標、現地の利用状況などを検証し、筆界の位置を慎重に検討したうえで、関係者に説明して境界確認を進めます。
土地家屋調査士の仕事は、単に機械を覗いて測るだけだと思われがちですが、実はその裏側にある作業こそが本番です。資料調査や隣地所有者の探索、日程調整、境界の説明、境界標の設置、そして確認書の取り交わし。東京土地家屋調査士会も説明している通り、この「対人折衝」や「関係者の探索」に、測量そのもの以上の膨大な労力と時間を費やすことも珍しくありません。
そして、ここでもやはり頭を悩ませるのが「私道」の存在です。
隣接する道路が公道であれば、道路管理者である国・都道府県・市区町村等との境界確認を進めます。一方、見た目は道路でも登記上は私道である場合には、原則として、その共有者全員との確認・調整が必要になることが多くあります。
私道が一人の所有ならまだしも、多くの方が共有しているケースも多々あります。人数が増えれば増えるほど、連絡を取り、立会いを調整し、書類に印鑑をいただくまでの道のりは遠くなります。
さらに厄介なのが、共有者の中に亡くなっている方がいて、相続登記が放置されているケースです。そうなると、まずは全国に散らばる相続人を調査し、連絡を取るという気の遠くなるような作業から始めなければなりません。
「一人だけ連絡が取れない」「日程がどうしても合わない」といった事態になれば、測量そのものよりも、こうした「人探しと調整」の方がはるかに困難を極めることがあるのです。
前にお話しした「私道部分の相続登記漏れ」は、単なる名義の問題に留まりません。将来、ご自身の土地を売ろうとしたり、境界をはっきりさせようとしたりする際に、思わぬ足かせとなって手続きを複雑化させてしまうのです。
「今の土地の形を知りたい」のか、それとも「売却のために境界を確定させたい」のか。目的によって、必要なアクションはガラリと変わります。 土地家屋調査士にご相談いただく際は、まずは「何のために測るのか」という目的を丁寧にお伝えいただくことが、スムーズな解決への第一歩となります。

サンシアスでできるサポート
サンシアスでは、所有不動産記録証明制度を利用する必要があるか、どの氏名・住所を検索条件にすべきか、取得後にどの不動産について相続登記が必要かを整理します。
相続登記だけでなく、預貯金、有価証券その他の相続手続をまとめて進める場合には、遺産整理丸ごとサポートをご利用いただけます。
また、相続マイページにより、判明した財産、必要書類、手続の進捗を見える化し、ご家族で共有しやすい形に整理します。
成年後見制度については、現在の制度と改正後の制度を区別しながら、必要な手続をご案内します。
測量については、まず不動産の所在地、資料、測量の目的を確認し、サンシアスで対応可能か個別にご案内します。遠方の不動産については、必要に応じて物件所在地の土地家屋調査士への相談をご案内します。
税務判断が必要な場合は税理士、相続人間に紛争性がある場合は弁護士、不動産の売却・活用については不動産会社など、必要に応じて他の専門家との連携も行います。
まとめ
今回のポイントは、次の4つです。

「不動産は実家だけだと思うけれど、本当にそれだけか分からない」という段階でも構いません。
サンシアスまでお気軽にご相談ください。現在分かっている資料から、確認すべき不動産と必要な手続を一緒に整理いたします。
この記事を担当した司法書士

司法書士サンシアス
代表
丹 茂孝
- 保有資格
司法書士 行政書士 土地家屋調査士
神奈川県司法書士会登録第1426号
簡裁訴訟代理権認定番号第601465号
神奈川県行政書士会登録登録番号第16090386号、会員番号5077号
神奈川県土地家屋調査士会登録第3030号
公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート会員
一般社団法人家族信託普及協会会員- 専門分野
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不動産登記全般、相続全般
- 経歴
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神奈川県司法書士会所属。平成18年度に司法書士試験に合格し、平成20年に神奈川司法書士会に登録。平成21年に行政書士試験合格。平成27年に土地家屋調査士試験合格。平成28年に行政書士と土地家屋調査士も登録。地域では数少ない、司法書士と行政書士と土地家屋調査士のトリプルライセンスを保有している相続の専門家として、横浜市内の相続の相談に対応している。
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