【10月号】所長丹のコラム配信
所有者不明土地はこうしてできる!|住所変更登記・建物登記・民事信託を考える
まえがき:所長丹の戯言
みなさまこんにちは。司法書士・行政書士・土地家屋調査士の丹です。
9月号はいきなりサボってしまいましたので、その分も含めて10月号にまとめました。笑
相続の仕事をしていると、「昔は誰も困っていなかったこと」が、何十年か後に大問題になっている場面によく出会います。亡くなった祖父母名義の土地、引っ越し前の住所のままの登記、何代にもわたって名義が変わっていない私道持分――。こんなお話を聞いて、「うちには関係ない」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、どこに隠れているか分からないのが現状なのです。近所の方々で共有している私道なんて、本当に無くなればいいと思うのですが、まだまだ残ってしまっているのが現在のこの国の姿です。
それでも、日本には、登記制度という画期的なものがあるので、今まではなんとか所有者を見つけ出してきました。しかし、今までは想像もされていなかった、「登記をしない」ということが頻繁に起こるようになってきたのです。不動産登記制度が明治時代に始まってから100年以上。時間が経つにつれ、どんどんと所有者不明土地が増加したのです。
私は、不動産に関する宿題を次の世代へ回さないこと自体が、立派な相続対策だと思っています。今月は、所有者不明土地がどうして生まれるのか、住所・氏名変更登記の義務化、建物登記の仕組み、そして老後対策としての民事信託についてご紹介します。
所有者不明土地はこうしてできる!
所有者不明土地とは、登記簿を見ても所有者がすぐに分からない土地や、所有者は分かっていても所在が不明で連絡が取れない土地のことです。
政府広報によると、2024年の国土交通省調査では、不動産登記簿だけでは所有者の所在が判明しない土地は全国で23%。
その主な原因は、相続登記の未了が63%、住所変更登記の未了が29%とされています。
所有者不明土地は、2016年時点の推計で約410万ヘクタール(九州本島を上回る広さ)とされています。 ただし、これは「誰の土地なのか、どれだけ調べても分からない」という土地だけではありません。登記簿だけでは現在の所有者やその所在が分からず、追加の調査が必要な土地も含まれています。
なぜ、このようなことが起きるのか。
理由は割と簡単です。
ある所有者が亡くなる。相続登記をしない。その相続人も亡くなる。さらに相続人が増える。その間に転居や改姓もある。住所変更登記もしない――。こうした小さな「後回し」が何十年も積み重なると、登記簿から現在の所有者へたどり着くことが難しくなるからです。
これは地方の山林だけの話ではありません。都市部の住宅地でも、見た目は普通の道路なのに登記上は多数の私人が共有している私道持分などで、同じ問題が起こります。これは、私が再三申し上げておりますが、そもそも当事者が所有している意思がない場合すらあります。売買や相続をきちんと行なっていても、私道部分だけは名義の変え忘れをしている恐れがあるのです。
「所有者不明」は「誰のものでもない」という意味ではありません。むしろ、本当の所有者や相続人を探し、権利関係を整理するのに非常に時間がかかる状態です。だからこそ、相続登記や住所変更登記は、単なる事務手続ではなく、次の世代へ正しい所有者情報をつなぐための手続でもあります。
住所・氏名変更登記は、もう義務です
2026年4月1日から、不動産の所有者は、住所や氏名・名称に変更があった日から原則2年以内に変更登記を申請する義務があります。
2026年4月1日より前に住所や氏名が変わっているのに登記が古いままの場合も対象で、原則として2028年3月31日までに対応する必要があります。正当な理由なく義務に違反した場合は、5万円以下の過料の対象となる可能性があります。
一方で、負担を軽減する仕組みとして「スマート変更登記」も始まっています。検索用情報をあらかじめ申し出ておけば、法務局が住民基本台帳ネットワークの情報を確認し、本人の意思確認を経て職権で住所等変更登記を行う仕組みです。
検索用情報の制度は先行して、2025年4月21日から始まっていますので、同日以降、所有者の名義登録をした方は、結局、住所・氏名変更登記義務を免れることとなります。
2026年度にスマート変更登記の対象となる個人については、法務省の案内では2026年12月中旬以降、順次、意思確認通知が送付される予定です。 ただし、売却などで登記の変更を急ぐ場合には、通常の変更登記を申請する必要があります。
「不動産を買ってから何度か引っ越している」「結婚や離婚で氏名が変わった」という方は、一度、登記簿上の住所・氏名を確認してみるのがおすすめです。
建物の登記は「建てる・変える・壊す」で違います
土地だけでなく、建物についても「現実の状態」と「登記簿の内容」が一致していることが大切です。
ここで少しややこしいのが、固定資産税と不動産登記は別の制度だということです。建物を新築すると、市区町村は固定資産税を課税するために家屋の状況を把握・調査します。横浜市でも、新築や増改築、取壊しがあった家屋について、固定資産税上の確認や届出の仕組みがあります。
しかし、これはあくまで税金のための話です。市区町村が建物を確認したからといって、法務局の建物表題登記まで代わりにしてくれるわけではありません。
建物を新築した → 建物表題登記
新しく建物を建てた場合には、その建物の所在、種類、構造、床面積などを登記する「建物表題登記」が必要です。不動産の表示に関する登記を代理する専門家が土地家屋調査士です。
増築・一部取壊しなど → 建物表題部変更登記
増築や一部取壊し、用途変更などによって、床面積・構造・種類など登記されている内容に変更が生じた場合には、建物表題部変更登記が必要になることがあります。古い実家では、昔増築した部屋やサンルーム、物置、車庫、離れなどが登記に反映されていないケースもあります。
建物を全部取り壊した → 建物滅失登記
建物を全部取り壊した場合には、建物滅失登記が必要です。
ここが少し面白いところです。市区町村へ取壊しを届け出たり、固定資産税の課税上「建物はもうありません」と把握されたとしても、法務局の登記簿から建物が自動的に消えてくれるわけではありません。
つまり、現地では更地なのに、登記簿の中では家がまだ堂々と建っている――という状態が実際に起こります。笑
建物が建ったときも、増築したときも、壊したときも、税金の世界と登記の世界は似ているようで別です。実家を売却したり土地を活用したりする段階で初めて不一致が分かることもありますので、古い建物は一度、登記簿と現況を見比べてみると安心です。
老後対策は遺言だけではありません|民事信託という選択肢
相続対策というと、まず「遺言」を思い浮かべる方が多いと思います。遺言は、亡くなった後に財産を誰へ引き継ぐかを決めるうえで、とても重要な制度です。
ただし、「認知症などで判断能力が低下した後も、家族に不動産や預金を管理してほしい」という生前の財産管理については、遺言だけでは対応できません。
そのような場合に選択肢の一つとなるのが、民事信託、いわゆる「家族信託」です。信託は、自分の財産を信頼できる人に託し、あらかじめ定めた目的に従って管理・運用してもらう仕組みです。
例えば、親が自宅や賃貸不動産、金銭などを信託し、子が受託者として管理する設計が考えられます。親自身を受益者とすれば、その財産から生じる利益を親の生活のために使う仕組みも設計できます。
ただし、信託は万能ではありません。基本的に管理できるのは信託した財産であり、介護施設への入所契約などの身上保護まで何でも代わりにできる制度ではありません。また、信託の内容によって税務上の取扱いも異なります。
任意後見、遺言、財産管理委任などと組み合わせた方がよい場合もあります。大切なのは「信託を使うか」から考えることではなく、「将来、何ができなくなると困るのか」「誰に、何を任せたいのか」から考えることです。税務判断が必要な場合には税理士等との連携も必要になります。
サンシアスでできるサポート
サンシアスでは、相続登記、住所・氏名変更登記、建物の表題・変更・滅失登記、生前対策としての遺言や民事信託などについて、ご本人とご家族の状況を伺いながら、必要な手続を整理します。
相続発生後に預貯金や有価証券、不動産などの手続をまとめて進めたい場合には、「遺産整理丸ごとサポート」をご利用いただけます。また、「相続マイページ」を活用し、判明した財産、必要書類、手続の進捗を見える化することで、ご家族にも状況を共有しやすくしています。
土地家屋調査士業務は現地調査を伴うことがあるため、まず資料と不動産の所在地を確認し、対応可能か個別にご案内します。遠方の場合には、必要に応じて物件所在地の土地家屋調査士への相談をご案内します。
税務については税理士、相続人間に紛争がある場合には弁護士、不動産の売却・活用については不動産会社など、内容に応じて他の専門家とも連携します。
まとめ|次の世代に「不動産の宿題」を残さない
所有者不明土地は、ある日突然生まれるわけではありません。相続登記をしない。引っ越しても住所変更登記をしない。建物を壊しても登記をそのままにする。そうした小さな後回しが積み重なって、次の世代の大きな宿題になります。 たしかに、ご本人は苦しまないかもしれません。しかし、残された相続人の方たちが大変な思いをしてしまうのです。
そして、生前の財産管理については、遺言だけでなく民事信託などの方法もあります。
「登記がどうなっているか分からない」「親の財産管理をこれから考えたい」という段階でも構いません。現在分かっている資料から一緒に整理できますので、気になることがございましたら、サンシアスまでお気軽にご相談ください。
※制度説明は2026年10月7日時点で確認した情報に基づきます。個別の事情によって必要な手続や利用できる制度は異なります。
この記事を担当した司法書士

司法書士サンシアス
代表
丹 茂孝
- 保有資格
司法書士 行政書士 土地家屋調査士
神奈川県司法書士会登録第1426号
簡裁訴訟代理権認定番号第601465号
神奈川県行政書士会登録登録番号第16090386号、会員番号5077号
神奈川県土地家屋調査士会登録第3030号
公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート会員
一般社団法人家族信託普及協会会員- 専門分野
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不動産登記全般、相続全般
- 経歴
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神奈川県司法書士会所属。平成18年度に司法書士試験に合格し、平成20年に神奈川司法書士会に登録。平成21年に行政書士試験合格。平成27年に土地家屋調査士試験合格。平成28年に行政書士と土地家屋調査士も登録。地域では数少ない、司法書士と行政書士と土地家屋調査士のトリプルライセンスを保有している相続の専門家として、横浜市内の相続の相談に対応している。
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